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8/12【新日本】真夏に「逸材、完全復活!」 飯伏退け棚橋が3年ぶり3度目のG1制覇

『戦国炎舞-KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28』(2018年8月12日)東京・日本武道館
優勝決定戦 ○棚橋弘至vs飯伏幸太×

 棚橋が飯伏との35分におよぶ優勝決定戦を制して、3年ぶり3度目のG1制覇を達成。真夏に「逸材、完全復活」を叫んだ.

 約1ヶ月間におよんだ今年の“真夏の祭典"頂上決戦に駒を進めたのは、“エース復権"へAブロックを単独1位で通過した棚橋と、4人首位タイで大混戦のBブロックを競り抜けた飯伏だった。棚橋は3年ぶり3度目のG1制覇がかかった一戦で、飯伏は初の決勝進出だった。

 「プロレスを世間へ広めたい」。共通の強い願いを持つ両雄。地道なプロレス啓蒙活動を続けて新日本を新黄金期に導いた棚橋を、飯伏は“神"と表現して尊敬し、地元凱旋となった昨年8・1鹿児島大会のG1公式戦では新兵器のヒザ蹴りで撃破。敬意を込めて棚橋を破った技の名を“カミゴェ"(神超え)と名付けた。

 その両雄の対決が、今年はG1優勝決定戦の舞台で実現。棚橋のセコンドには欠場中の柴田勝頼、飯伏のセコンドには盟友のオメガが就いた。新日本で育った二人と、DDTで育った二人。ほぼ同期(1年差)の柴田が棚橋に「新日本プロレスをみせろ」と声をかけるなか、“パンパン"の武道館はゴング前から期待感が充満した。

 先手を奪ったのは棚橋だった。飯伏がテーピングをほどこしている右ヒザを攻め立てると、藤波辰爾ゆずりのドラゴンスクリューや木村健悟ばりのトライアングルスコーピオンまで繰り出して“一点集中"のセオリーをみせた。

 対する飯伏もアクロバティックに反撃。棚橋の駆け上がり式ドロップキックを、エプロンサイドでジャンプ一番避けながらフットスタンプで押しつぶすと、武道館は大きくどよめいた。さらには棚橋の飛びつき回転エビ固めを踏ん張りながら、持ち上げ、そのまま頭から突き刺す“人でなし式"ドライバーも繰り出した.

 棚橋も譲らずにグラウンド式ドラゴンスクリューで再び“一点集中"にこだわってテキサスクローバーホールドへ。逃れられても場外へのハイフライアタックを繰り出したが、負けじと飯伏もカウンターのフランケンシュタイナーから場外に向けてスワンダイブ式ケブラーダを敢行し、アクロバティックなスタイルを貫いた。

 さらに飯伏が攻勢。飛びつき式の雪崩式フランケンシュタイナーでリング上空に大きな孤を描いてみせるや、ハーフネルソンスープレックスで投げ捨て、カミゴェを狙う。避けられても鋭い低空レッグラリアットで鎮圧し、シットダウン式パワーボムを狙った.

 着地した棚橋が強烈な左ビンタを振り抜くと、“キラー飯伏"が覚醒。容赦ない腰の入った掌打や前蹴りで棚橋の顔面を攻撃しまくったものの、棚橋の“鬼"も覚醒だ。飯伏の掌打を受けるたびに逆に前進し、キレていた飯伏も驚きを隠せぬ表情に。そのまま両者先を争うように張り手を打ち合う乱打戦に発展。新日本仕込みの闘志をみせた棚橋が猛烈な左ビンタをカウンターで連発して制したかにみえたが、飯伏も大ぶりのラリアットをクリーンヒットさせて武道館を大歓声が包む。

 試合は限界突破の消耗戦へ。こん身のエルボー合戦をカウンターのスリングブレイドで制した棚橋がだるま式ジャーマンで流れをつかんだものの、飯伏も剣山で撃墜。逆に鋭角的な左の高速ニーアタック(ボマイェ)を後頭部に叩き込み、その場飛び式のムーンサルトダブルニーを棚橋のみぞおちに落とすや、コーナーめがけて非情のやり投げを発射。頭からコーナーに突き刺さった棚橋がエプロンサイドに逃れたところで、“ここ一番"のスワンダイブ式ジャーマン発射にも成功。武道館が大きく揺れるなか、シットダウン式ラストライドで叩きつけて3カウントを迫ったものの、棚橋も肩を上げて爆発的歓声に包まれた。

 勝機とみた飯伏はカミゴェを狙う。棚橋もスリングブレイドで切り返そうとしたものの、避けた飯伏もクロスアーム式のジャーマンへ。キックアウトされてもクラッチを外さず、そのまま今度こそのカミゴェを狙った.

 だが、棚橋もこれを首を巻き込んで切り返すや、そのままツイスト&シャウト(ネックスクリュー)を連発だ。追撃を切り抜けた飯伏と再び張り手合戦となったものの、避けてバックに回った棚橋がドラゴンスープレックスホールドをガッチリ。肩を上げられてもハイフライフローを投下だ。さらには立ち上がろうとする飯伏をハイフライアタックで押しつぶし、なおもカバーにいかずに“3発目"となる旋回式のハイフライフローを投下。合唱とともに3カウントが数えられた。

 35分におよんだ激闘を制して、棚橋が3年ぶり3度目のG1制覇を達成。セコンド・柴田に肩車されて喜びを爆発させた棚橋は、起き上がった飯伏とじっと見つめ合ったものの、飯伏は“握手はしない"そぶりをみせると、悔しげに頭を抱えながら花道を下がった。

 マイクを握った棚橋は「G1、優勝したぞ〜! G1、生き残りました。それすなわち、新日本プロレスで生き残ったということ。ここから先、東京ドーム、さらにその先まで俺が引っ張っていきます!」と宣言。一度下がろうとして“棚橋コール"を誘発し、3度に渡って久々のエアギターもかき鳴らした。そして最後は「逸材、完全復活。見ていてください。日本武道館の皆さん、愛してま〜す!」と絶叫し、真夏の祭典を締めくくった。

 長らく新日本躍進の原動力となってきた棚橋だが、ここ数年は負傷欠場もあいまって“中心"には届かぬ日々が続いた。だからこその復活宣言。G1優勝者には来年1・4東京ドーム大会でのIWGPヘビー級王座挑戦権利証が与えられるだけに「東京ドームのメインに戻ること、これすなわち、IWGPのチャンピオンに、もう1回、なります!」と誓った。

 バックステージでは「プロレス団体っていうものは、いわばチャンピオンそのものなんですよ。どんなチャンピオンでも、素晴らしいチャンピオンでも、チャンピオンに団体が似てくるんですよ」。そんな含蓄ある言葉も残した逸材。もう一度、新日本を“棚橋色"に染める挑戦が始まる。


【試合後の棚橋】
――現在の心境を

▼棚橋「今まで、苦しんだ分……苦しんでない! 苦しんでない! 楽しんで、喜んでやってきたけど、結果が出なかった分、今日はいつもより、倍うれしいです」

──改めて今G1を振り返って?

▼棚橋「考えに考えたG1 CLIMAXだったと。今の自分に何ができるか。できないか。そして今の自分の体に感謝して、参加メンバー、見てみても、生き残るのは大変でした」

──飯伏戦を振り返って?

▼棚橋「もう、飯伏に対して、俺からどうこう言うレベルはとっくに過ぎてて。あとは得意の飯伏が覚醒した状態のままでやれるか。その分エネルギーは使うよ。でも、それが真のトップレスラーだから。俺は、オンとオフがないから。それが自慢だから」

──飯伏が覚醒して打撃戦となっても、むしろ前に出たが?

▼棚橋「うん。何か、この試合を通じて、俺という人間の一部分でも、出ればいいなと思ったんです。だから、最後まで諦めませんでした」

──柴田がセコンドに就いたが?

▼棚橋「粋ですよね、やってくれることが。とっても。セコンドで『新日本プロレスを見せろ』って言われて、その気になりました」

──武道館でのエアギターの感想は?

▼棚橋「すっげぇ気持ちよかったですけど、エアギターが、錆びついてました。あまりにやってなくて、チューニング不足で。でも大丈夫、これからガンガンかき鳴らしていくから」

──東京ドームに向けて?

▼棚橋「東京ドームのメインに戻ること、これすなわち、IWGPのチャンピオンに、もう1回、なります!」

──戦前『Bブロックとの違いを見せていく』と言っていたが?

▼棚橋「これはね、もちろんこれからも続けていきます。ただ、今日やって明日変わるってもんじゃなくて、半年続けて、1年続けて、チャンピオンになって、そうして形作られていくものなんで。プロレス団体っていうものは、いわばチャンピオンそのものなんですよ。どんなチャンピオンでも、素晴らしいチャンピオンでも、チャンピオンに団体が似てくるんですよ」

──3年前の優勝の後から大きな結果は出なかったが、気持ち的には追い込まれたりするものがあった?

▼棚橋「ないです!…僕のいいところは、どんなトレンドがあっても、どんな形のプロレスが流行っても、『俺は俺だ』って、『俺がやってるプロレスが面白い』って胸を張れるところ。何でそうやって胸を張るか。それを『そうだ!』って応援してくれるファンもいる。『いや、それは違うぞ!』と言ってくれるファンもいる。熱いじゃん! 全員熱いじゃん! それがプロレス界にとって必要なこと。だからプロレス界に俺が最も必要なんです」

──昨年11月に飯伏との王座戦を行った際は「オマエに覚悟はあるのか」と問いかけていたが?

▼棚橋「もう、飯伏の体力、気持ち、技術、何を取っても全部俺より上だと、それぐらいの評価はしてる。あとは、ここ(ハート)、心の持ちようひとつなんですよ。『俺が全員引っ張ってやる!』っていうのを飯伏に求めるのは酷かもしれない。じゃあ別に新日本プロレスじゃなくてもいいじゃないか。プロレス界、さらに大きなスケールで『俺が全部引っ張ってやる』っていうことを言葉に出す。態度で見せる。それが……もうホントに言うことないと思ったけど、これで最後にします。分かってると思うから」

──故障欠場も多かったが、エースとしては歯がゆさもあった?

▼棚橋「歯がゆいですよ。日本全国回るじゃないですか。全員の前で、元気な姿を見せたいんですよ。全力の姿をね。だからこれからも鍛錬を続けるし、日本全国のリングに立ち続けます」

──平成最後のG1を制した形で、平成最後の東京ドーム大会での大舞台も見えてきたが?

▼棚橋「例年通りであるならば、東京ドームの権利証、えぇ。何てったって、よぉーく知ってますから。あとは棚橋次第。ここから下がるか、それとも、ここから上がるか。それだけです」

【飯伏の話】「……言葉がないです、今はもう…。ここまで頑張った。36年で一番頑張った1ヵ月だった気がしますね。それでもまだ、まだ越えられませんか。まだダメですか。まだ…諦めることとか、あまりしたくないですけど、ちょっと……諦めそうな自分がいます。1回諦めて、2年前に復帰してからは『絶対に諦めない』って決めて、またプロレスをやり始めたんで。何が何でも立ってみます。僕は諦めないです。それ以上ないです」

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