12/14【WRESTLE-1】W-1の現状に苦言「僕の対抗馬が出てこなかったのが一番の問題」、「本当にやりたい相手がいない」 W-1提供・芦野インタビュー前編
今年3月に河野真幸を破ってWRESTLE-1王座を戴冠し、デビューからわずか約2年でW-1マットの頂点に立った芦野祥太郎。9・2横浜文体で激闘を繰り広げた黒潮“イケメン"二郎戦を筆頭に、W-1の主力勢を総なめにし、12・10後楽園大会では伊藤貴則に完勝してV7を達成。王者としての越年を決めた。敵なしといってもいい状況に、芦野は「今後の防衛戦はやりたい相手としかやらないと。『挑戦します』って出てきただけじゃ、もうやりません」と改めて強調。「本当にやりたい相手としかやりたくないんですよ。で、今のところ、そういう選手がいないんですよ、W-1の所属の中に。それが凄く悲しい」と嘆いた絶対王者は、「僕の対抗馬が出てこなかったっていうのがこの1年の一番の問題」とW-1マットの現状に苦言を呈し、ベテラン勢の奮起も促した。W-1提供の芦野インタビュー前編は以下の通り。
【芦野インタビュー(前編)】
▼芦野「今日はすみませんね、急に呼び出してしまって」
──いえいえ。チャンピオンが何か言いたいことがあるということなんで、こうしてやって来たんですけど。
▼芦野「そうなんですよ。後楽園大会終わりで会見があるかと思ってたんですよ。だから準備してたんですけど、『芦野さんは会見ないです』ってスタッフに言われて。これじゃあ、言いたいことを言える場所がないんで、急遽呼び出したんですけどね」
──なるほど。いつもなら、防衛戦をやったら一夜明け会見をやるのが通例でしたけどね。
▼芦野「そうです。ただ、一夜明けって言っても、だいたい次の挑戦者が決まっていたりとか、宣伝的な部分での会見でしかないんですよ。まずそういうところも問題ですよね。だって、僕、7回防衛したんですよ? これまでのチャンピオンは2回が最高でしょ? にもかかわらず、一夜明け会見に呼ばれないっていう。まあ、それが会社の僕に対する評価なんでしょうけどね。7回も防衛したんだから、ボーナス寄越せよって思いますけどね」
──まあ、今年はチャンピオンとしてほぼ1年間過ごしてきて、プレッシャーのかかるメインイベントを何度も務めてきましたからね。
▼芦野「そうですね。このW-1チャンピオンシップのベルトに絡んでメインだったのが8回。3月、4月、5月、6月の後楽園、9月は文体と後楽園の2回、そして11月、12月と、全部で8回。しかも全勝ですよ」
──チャンピオンになってからはタッグマッチとかでパートナーが負けたことありましたけど、ご自身がフォールを奪われたり、ギブアップしたことってないですよね?
▼芦野「ないですね。憶えてないですね。記憶にございません」
──無敗という状況でこの1年を終えられたということですよね。
▼芦野「いやあ、いい1年でしたね。去年は怪我があって、それで棒に振っちゃったところがあるんでね。それを克服して、レスラーとして成長できたのかなと思いますね。1年間、怪我なく過ごすっていうのは裏の目標でもあったんですよ。表はW-1の完全制圧。ベルトを獲って、それを守り続けるっていうところがあって、中には怪我を隠しながら臨んだタイトルマッチもありましたけど、こうして欠場することなく続けられたことは大きかったなと思いますね」
──逆に怪我さえなければ、これぐらいの結果を出す自信はあったということですか?
▼芦野「まあ、勝てるんだろうなというのはありましたけど、負けなかったのは奇跡っちゃ奇跡ですよね。試合だから、何が起きるかわからないわけだから。まあ、自分のことはこれぐらいにしておきましょう。正直、僕のことはどうでもいいんですよ」
──他に言いたいことがあるわけですね。
▼芦野「そうです。わざわざ呼び出して、何を言いたいかというと、W-1の現状についてですよね。この間の後楽園大会でも試合後に言いましたけど、今後の防衛戦はやりたい相手としかやらないと。『挑戦します』って出てきただけじゃ、もうやりません。毎度毎度その繰り返しでしたけど、ついに10日の後楽園大会では誰も出てこなかったじゃないですか?」
──次の防衛戦の相手はまだ決まってない状況ですよね。
▼芦野「会社の意向はわからないですけど、チャンピオンがやらないって言ったらやらなくてもいいと思うんですよね」
──会社の決定よりもチャンピオンの意向のほうが優先されるべきだと。
▼芦野「そうですよ。だって、僕のやりたくない試合が始まって、カウントアウト負けとかおもしろくないでしょ?」
──やりたくないからリングに上がらずにわざと負けちゃうと。
▼芦野「本当にやっちゃいますよ。あるいは最初から出てこないとかね」
──試合そのものをボイコットしますか。
▼芦野「もう、本当にやりたい相手としかやりたくないんですよ。で、今のところ、そういう選手がいないんですよ、W-1の所属の中に。それが凄く悲しいんですよね。後楽園が終わったあとに知人に祝勝会をしてもらったりしたんですけど、その人たちから次の防衛戦の相手として出てくる名前は他団体の選手やフリーの選手ばかりですよ。あえてその名前は言わないですけど。その人たちはずっとW-1を見に来てくれている人たちですよ。その人たちの口から所属選手の名前が出てこない。所属選手が僕に勝てると思ってないんですよね。僕らは所属選手でこのW-1という団体を盛り上げようとしているのに、チャレンジャーとして名前が出てこない。それが凄く悲しいし、嘆かわしいですね」
──今年1年はほぼ所属選手で興行をやってきましたからね。
▼芦野「僕は倒した相手に『挑戦してくんな』とは言ってないんですよ。『下から這い上がってこい』って言ってるんですよ。這い上がって僕のところまでもう一度来てほしいんですよ。特にベテラン! おとなしいというか、大人になっちゃったというか。『若い者が引っ張っていくべきだ』ってあえて一歩引いてるのかわからないですけど、もう一回20代の頃のようなギラツキを思い出してほしいですよね。だって、僕は27歳ですよ? 一回りも下の人間がのさばっていて、本心では気に食わないと思うんですよ。それなのに一歩引いている現状は良くないですよね」
──まあ、ベテランの選手たちも会社のことをいろいろ考えなきゃいけないし、あえて若い人たちに任せようとしている部分はあると思うんですよ。
▼芦野「でも、レスラーって結局は個人ですからね。若手に任せていたら、そのまま引退していくだけですよ? それでいいんですか? もうひと花咲かせましょうよ。まあ、僕は基本的にはリングの上で闘うことしかできないんで。経営もできなければ、営業もできない。プロレスしかできないし、上の人たちも大変だと思うんですよ。それでも、もう一度リングの上でひと花咲かせてほしいなあ」
──なるほど。まずはベテランに奮起してほしいというということですね。まあ、今年の芦野選手の防衛戦を振り返ると、前半はベテラン勢で、それ以降は……。
▼芦野「全員NEW ERAですよ! つまんないんですよ、NEW ERAとのタイトルマッチって。おもしろかったのはイケメンだけですよ」
──9・2横浜文体のメインを飾った試合ですね。凄い激闘でしたもんね。
▼芦野「イケメンはNEW ERAの中でも頭一つ二つ抜けているんですよ。だから、もったいないですよね、NEW ERAという負のユニットにいるのが」
──負のユニット(笑)。
▼芦野「自分たちで発信できないですからね。イケメンはその中で唯一発信力を持った選手なんで。まあ、試合スタイルは気に食わないですけどね。ジャケットを着て、『ウェ〜イ!』ってやっているだけなんで。ただ、魅せる試合をするし、彼の存在は認めてます。だから、10日の後楽園も最後に呼び出して締めさせたんですよ」
──急に呼び出したんで何をするかと思ったら、「締めろ!」って言ってマイクを預けたんでびっくりしました(笑)。
▼芦野「まあ明るく終わったほうがいいかなと思って。でも、他のNEW ERAの子たちはなんか現状に満足しちゃっているのを感じますよね」
──ただ、芦野選手が持っているW-1チャンピオンシップのベルト以外は、全部NEW ERAが持っているんですよね。
▼芦野「タッグ、クルーザー、リザルト、UWA。でもこれら全部を合わせても僕のベルトよりも価値は低いですからね」
──確かにベルトは持っているものの、後楽園大会のメイン後の様子を見ていると、イマイチ勢いが感じられないんですよね。
▼芦野「そうなんですよ。主張がない、言葉の強さがない。だから、お客さんの心に突き刺さるものがないし、響かない。NEW ERAがそうだから、お客さんも挑戦者なんか誰でも良くなっちゃっているんですよ。だって、ファンは誰にチャンピオンになってほしいとか、勝ってほしいなんて望んでないですよ。僕に負けてほしいんですよ」
──古い話で恐縮ですけど、憎たらしいぐらいに強かった頃の北の湖のような状況になってしまったと。
▼芦野「そうですね(笑)。その状況を僕自身が作り出してしまったんですけど、対抗馬が出てこなかったっていうのがこの1年の一番の問題だと思いますね。イケメンもおもしろい試合をするし、会場を沸かせますけど、ファンには『芦野には勝てねえんだろうな』って思われちゃっているわけですよ。『おもしろいけど……』止まりなんですよね。そこに彼の強さや怖さが出てくるとおもしろいと思うんですけど、現状では楽しいことばかりやっちゃっているんで」
※後編に続く