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2/21【新日本】観客帰らず感謝の大イーヅカコール…飯塚が“狂乱"貫き引退 アイアンフィンガーはタイチの手に

『NEW JAPAN ROAD〜飯塚高史引退記念大会〜』東京・後楽園ホール(2019年2月21日)
飯塚高史引退試合 ○天山広吉&オカダ・カズチカ&矢野通vs鈴木みのる&タイチ&飯塚高史×

 天山に説得されながらも、飯塚は最後まで狂乱ファイトを貫いて引退。何も語らずに32年のレスラー生活に幕を下ろすと、観客は帰らず、感謝の飯塚コールを送った。

 飯塚は86年11月にデビュー。正統派レスラーとして期待を集め、海外遠征からの凱旋帰国後は野上彰(現AKIRA)、エル・サムライとともに「闘魂トリオ」として売り出された。また、93年には野上とJ・J・JACKSを結成して話題を呼んだ。その後は正規軍の重鎮として、選手会長も務めたが、2008年にG・B・Hに蹂りんされる天山を救出し、友情タッグを結成するも、直後に裏切ってG・B・Hと結託。スキンヘッドとなり、アイアン・フィンガーを装着して、"クレイジー坊主"と化した。2009年からはCHAOSに加わるが、2014年に反旗をひるがえし、鈴木軍に電撃加入。それ以降は鈴木軍のメンバーとして暴れ回ってきたが、今大会での引退することになった。

 引退決定後、天山は友情タッグ再結成を呼びかけたものの、飯塚本人は聞く耳を持たず決裂。そこで、天山は反対側のコーナーに立ち、CHAOSで飯塚と共闘していた時期のあるオカダ&矢野とトリオを組むことに。対する飯塚は鈴木軍の鈴木&タイチと組んで、引退試合に臨んだ。

 大歓声に迎えられた飯塚はかつて何度も襲撃した野上慎平アナを発見すると、実況席に突進。暴走してシャツを引き裂く。一方、オカダ組が入場すると、友情タッグTシャツを着た天山がマイクで「飯塚さん、今日で引退するんですよね? 最後にもう1回、元に戻ってください」と最後のアピール。しかし、飯塚は無視して襲いかかり、波乱の幕開けとなった。

 飯塚に冠番組内で襲撃されたことのあるももいろクローバーZのメンバーも客席で見守る中、序盤こそ攻め込まれた飯塚だったが、口の拘束具を外されると、相手チームの額に次々と噛みついて大暴走。海野レフェリーまで追い回す。

 オカダと対峙しても暴走は止まらず、つま先などに噛みついた。ならばとオカダも巻き返し、レインメーカーを予告したが、振り払った飯塚はかつての必殺技である“魔性のスリーパー"を解禁する。脱出を許し、ドロップキックに被弾しても、大声援を浴びた飯塚はさらなる引き出しを開け、ロシア留学で身につけたサンボ流のビクトルヒザ十字固めに捕獲。さらにはかつての必殺技・ブリザードスープレックスの構えに。これは不発に終わったものの、飯塚の歴史が詰まった動きに場内は沸騰した。

 代わった天山の猛攻を受けた飯塚だったが、鈴木たちの援護射撃を受けて、再び魔性のスリーパーに捕らえる。観客は「落とせ」コールで後押しした。ここがチャンスと、飯塚はアイアンフィンガーを装着。天山と向かい合う。天山が必死に外すよう説得すると、飯塚は頭を抑えて苦もん。それでも天山に襲いかかったが、介入した矢野のローブロー、オカダのツームストンパイルドライバーを立て続けに食らって大ピンチに。すかさず天山はダイビングヘッドバットを投下。あえてフォールに行かず、友情タッグTシャツを倒れる飯塚に被せると、ムーンサルトプレスを落として天山はクレイジー坊主の最後を介錯した。

 敗北した飯塚だったが、天山が掲げた友情タッグTシャツを目の当たりにし、大きな「飯塚」コールを浴びると、頭を抑えて苦しむ。さらに、声援が大きくなると、飯塚は天山と見つめ合った。差し出された天山の手を前にして、飯塚は激しくもだえるが、最終的に握手に応じると、場内は大歓声に包まれ、ハッピーエンドを迎えたかと思われた。

 しかし、その直後に飯塚は天山の額に噛みついて奇襲。これを合図に鈴木軍の面々がリングをジャックする。飯塚は天山をパイプイスで殴り飛ばすと、今度こそアイアンフィンガーで天山の喉元を射貫いた。そのまま飯塚は場内を徘徊。南スタンド席まで乗り出して観客を威嚇する。そんな飯塚に対して、タイチは「おい、飯塚。待てコノヤロー。お前、本当に引退するのか、どっちなんだよ。最後ぐらいてめえの口でハッキリ言え、コノヤロー」とマイクでアピールした。

 飯塚はリングサイドに戻ってくるが、やはり何も語らない。そんな飯塚へのはなむけとばかりに、鈴木が10カウントのゴングを矢継ぎ早に打ち鳴らすと、阿部リングアナが「怨念坊主、181cm、107kg、飯塚高史!」と最後のリングコールを送った。飯塚はリングサイドで暴れ回り、無言でバックステージへと消えていく。リング上に落ちていたアイアンフィンガーを拾い上げたタイチは不敵な笑みを浮かべ、それを持って下がっていった。

 セレモニーを行わない異例の引退試合となったが、最後までクレイジー坊主を貫いた姿を見て、いつ果てることなく後楽園ホールに「飯塚」コールがこだまする。5分近く続くと、再び阿部リングアナが「181cm、107kg、飯塚高史!」と感極まった表情でコールし、約32年にわたって新日本で戦い続けた飯塚のレスラー生活は幕を閉じた。

 バックステージでアイアンフィンガーを手にしたタイチは「これは俺がもらうよ。そうだ、飯塚。お前は引退した意志はねえんだよ。いつでも俺が持ってるからよ。これをはめたくなったら、俺のところに来いよ。いつも持ち歩いてやるから」と惜別のメッセージ。最後の最後で裏切られた天山は「どんな形であろうと引退したんやから、もう二度と俺の前に姿を現すなよ。まさかどっか闇討ちすることないやろうと思うけど」と複雑な心境を垣間見せつつも、「彼の生き様を思う存分見せてもらいました。ご苦労さまでした。ありがとうございました」と敬意を表した。

【天山の話】「最後の最後ぐらい飯塚さんよ、言うこと聞いてくれって。どんだけ毎回言っても、あのザマ。今日も一瞬、いやもっと長い瞬間、あの人の気持ちが動いてたのはわかった。でも完全に今日は覆された。あんなにあいつらの結束が固いと思わなかった。最後の最後、あの飯塚高史、元に戻って、もう1回…もう1回…引退なんて言わんで、もう1回カムバックや。今日見たでしょ? 昔の飯塚のスリーパーやら、ブリザードやら、あんないいもん、持ってんねん。チクショウだ。まあ、本人がもう辞めるって言ってるんだったらどうしようもないあれですけど、もったいない。もう1回なんか夢見たかったっていう。飯塚高史ともう一度だけプロレスに友情があるのかどうか。まあ、上手くいきそうでいかない。しょうがないです。これが彼のプロレス道の、ヒールの悪投の生き様か知らないけど。ああクソ。最後に大どんでん返し待ってたけど、上手いこといかないです。あんだけ誘ってもあかんねん。まあ、今日で飯塚高史、最後、引退。どんな形であろうと引退したんやから、もう二度と俺の前に姿を現すなよ。まさかどっか闇討ちすることないやろうと思うけど、次に現れる時は元の飯塚に戻っててほしいね。だったらもう1回でも何回でもやってやる。とにかく33年ですか。まだまだ全盛、いけると思うのにね。これで終わってしまって残念やと思います。まあ、彼の生き様を思う存分見せてもらいました。ご苦労さまでした。ありがとうございました」

【オカダの話】「まあ、飯塚さん、素晴らしい選手だったんじゃないでしょうか。この俺と最後、ああいう攻防をしたわけだし。最後の最後で出してきたね。あんな技、俺は見たことないよ、飯塚さんがやるのは。本当に飯塚さんあっぱれでした…なんて言えないよ。とんでもないヒールレスラーだ、この野郎」

【タイチの話】「(アイアンフィンガーを手にして)聞こえるような聞こえねえような。残しちまったな、あいつ。結局辞めたのか、やるのかどっちだ? 意志がねえからさっぱりわからねえな。本当によ、辞めさせられたのか、辞めたのか、どっちなんだ? 真相はわかんねえよ、あいつにしか。もしかしたら、俺と天山が探していた飯塚の心っていうのは…そんなわけねえか。まあ、いいよ。これは俺がもらうよ。そうだ、飯塚。お前は引退した意志はねえんだよ。いつでも俺が持ってるからよ。これをはめたくなったら、俺のところに来いよ。いつも持ち歩いてやるから。戻って来いでも、復帰でもねえ。いつでもまた入って来いよ。あの時の札幌みたいによ。カッコよかったぞ。待ってるぜ」

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