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11/12【DDT】赤井が完全燃焼でマットに別れ「夢のような幸せな人生でした」 引退後は裏方でDDTを後方支援へ

『Ultimate Party 2023』東京・両国国技館(2023年11月12日)
赤井沙希引退試合 ○山下実優&丸藤正道&樋口和貞vs坂口征夫&岡谷英樹&赤井沙希×

 赤井が引退試合で完全燃焼。「プロレスラー赤井沙希の10年間、本当に夢のような幸せな人生でした。皆さん心から愛してます!」と叫んで、マットに別れを告げた。高木三四郎の要請を受けて、引退後は裏方としてDDTをバックアップすることになった。

 赤井は高木にスカウトされ、2013年8月にプロレスデビュー。個性豊かなレスラーが集まるDDTマットの紅一点として独自の存在感を発揮して活躍してきたが、10周年を機に引退を表明した。引退ロードではERUPTIONの盟友・坂口&岡谷とともにKO-D6人タッグ王座を守り抜き、王者のまま引退試合を迎えた。

 対戦相手は元ERUPTIONのメンバーである樋口、同期でプライベートでも仲の良い山下、そしてプロレス入り前から親交があったプロレスリング・ノアの丸藤。強力な3人を前に、赤井は“強く、気高く、美しい"ファイトを披露した。

 大歓声で迎えられた赤井は先発を買って出ると、最後となるリングの感触を確かめるように、山下と基本技で先制争いを繰り広げる。丸藤との対戦も序盤から実現。容赦ない逆水平連打やステップキックに被弾してしまうと、さらに山下の鋭い蹴りや樋口のパワフルな攻撃の餌食に。それでも必死に食らいつくと、観客は「赤井」コールで後押し。坂口がゲキを飛ばすと、赤井はフロントハイキックで樋口を蹴り倒して意地を見せた。

 赤井につなげようと、坂口と岡谷が気迫のこもったファイトを披露。試合を立て直すと、再び赤井がリングに入る。大声援を浴びながら赤井は山下と激しい蹴撃戦を繰り広げた。気持ちで引かず、バズソーキックからケツァル・コアトルを決めてチャンスをたぐり寄せる。両軍入り乱れての乱戦になっても、逆水平を放ってきた丸藤の顔面に赤井はナックルパンチを放って気を吐いた。その後も山下と真っ向からミドルキック合戦で火花。ハイキックも相打ちとなり、同時に崩れ落ちる。

 坂口&岡谷が献身的な動きを見せたものの、丸藤がフックキック、樋口が頭突きを容赦なく赤井にぶち込むと、流れは逆転。山下は得意技をこれでもかと叩き込むが、赤井がフォールを返すと両国は「赤井」コールに包まれる。坂口&岡谷と丸藤&樋口はあえて場外に降りて2人に勝負を託すと、山下は絶叫から必殺のScull Kick(バックスピンキック)を一閃。感極まった表情で押さえ込むと、赤井は大の字のまま3カウントを聞いた。

 赤井が完全燃焼でごう沈。倒れたまま山下と抱擁すると、場内から大きな拍手が巻き起こる。赤井の足跡を辿るVTRが流されると、引退セレモニーへ。ともにKO-D6人タッグ王座を最後まで保持した盟友の坂口&岡谷のほか、親交の深い彩羽匠と山下りな、生みの親的存在の高木からも花束が贈呈される。

 高木は「10年間DDTを愛し続けてくれてありがとうございます。大きな怪我もなく、今日を乗り切れたこと、あなたは本当に立派なプロレスラー・赤井沙希です。お疲れ様でした」と労をねぎらうと、最後のお願いとして、「今日はプロレスラーは引退するかもしれませんが、僕らにはまだまだ赤井沙希が必要なんです。裏方として僕らと一緒に、DDTと一緒に歩んでもらってもいいですか? あなたは大事な仲間だから、一緒にこれからもDDTを作っていってほしいです」と提案した。赤井は「自分でよければ、今度はDDTのみんなを輝かせる側に回らせてください」と承諾する。セレモニーでは赤井と縁のある新日本の棚橋弘至や真壁刀義、天龍源一郎、そしてサプライズでWWEの中邑真輔からもVTRメッセージが届いた。

 最後にマイクを持った赤井は「皆様本日はご来場いただきありがとうございます。今日は動悸が激しくて、情緒がやばいんで、皆様にどうしても伝えたいことを絶対に飛ばしたくないと思いまして、お手紙を書いてきました」と手紙を読み上げ始める。

 「デビューの時に立った両国がついこの間の時のように思います。でも、10年前にここから見た景色と今の景色では全然違って見えます。私は1人じゃなかったです」と語りだした赤井。「18歳の時に上京して、いつも独りぼっちでした。本音で言い合える、本気でぶつかり合える仲間は誰一人いませんでした。なぜなら私自身が関わりを持ちたくない、面倒臭い、上っ面の関係だったらないほうがましと思っていたからです」とデビュー前の状況に触れると、「けど、10年前にこのチームの一員になって、皆様と出会って。楽しかったり、ムカついたり、喜んだり、一緒に涙したり、否応なしに感情が動かされるプロレスラー生活を送る中で、自分が一番欲しかったけど、諦めたものを、気づいたら手にしていました」と感慨深げに振り返る。そして、「本気で守りたいと思える仲間、どこかドライな私が自分を犠牲にしてでも守りたいと思える仲間、それがDDTのみんな、今見守ってくださっているファンの皆さんです。ありがとうございます」と感謝の言葉を贈った。

 「そう思えたのは、DDTのみんなが、ファンのみんなが、こんなに弱くてダメな私に上辺ではないリアルな愛をたくさんくれたからです。本当の愛情を知りました。そして、私はDDTを、ファンのみんなを、いつしか仲間という思いを超え、家族と思うようになりました。そう、皆さんが私にとっての家族なんです」と断言すると、「このリングを降りたら、私は選手ではなくなります。でも、家族のつながりはどこで何をしていても切れることはありません。私はみんなと心でつながっているんだという思いを胸に、新たな道を歩んでいきます」と引退後の未来を見据えた。

 「いつどんな時も家族であるDDT、そしてファンのみんなのことを思い続けて生きていきます。皆さんこれからも一緒にいましょう。心でつながっていましょう」と呼びかけると、「プロレスラー赤井沙希の10年間、本当に夢のような幸せな人生でした。皆さん心から愛してます! 本当にありがとうございました」と万感の思いを込めてメッセージを締めくくった。

 万雷の拍手の中、10カウントゴングが打ち鳴らされ、最後の選手コールが終わると、客席から赤と白の紙テープが投げ入れられ、赤井はついに引退。赤井は別れを惜しむように、客席に何度も手を振り、リングサイドのファンとハイタッチを交わすと、入場ゲート前で深々と一礼。最後まで試合タイトルにあるように“強く、気高く、美しく"レスラー生活を終えた。

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