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12/31【RIZIN】宮田が劇的一本勝ちで14年の選手生活に幕 KIDの甥・アーセンにはエール

『Cygames presents RIZIN.14』さいたまスーパーアリーナ(2018年12月31日)
宮田和幸引退試合&山本“KID"徳郁メモリアルマッチ ○宮田和幸vs山本アーセン×

 宮田が劇的な一本勝ちで14年の選手生活に幕を下ろすと、対戦相手となった山本“KID"徳郁の甥・アーセンには「物凄い才能を持っている選手なんで、これから頑張ってもらいたいと思います」とエールを送った。

 宮田はレスリングオリンピック代表の実績を引っさげて、2004年に総合デビュー。HERO'SやDREAMなどで活躍してきた。2016年12月にはRIZINにも参戦し、アンディ・サワーから一本勝ちをあげている。今年9月の『RIZIN.13』のリング上で引退を発表。かつて衝撃的な4秒殺で敗北を喫した山本KIDの甥にあたるアーセン相手に引退試合を行った。アーセンはRIZINで2連敗中。必勝を期して、今年他界した叔父のメモリアルマッチに臨んだ。42歳の宮田と22歳のアーセン、その差は20歳だ。

 ゴングが打ち鳴らされると、あの時の秒殺を再現するかのように、宮田がいきなり突っ込んで飛びヒザ蹴りを放つ。上手くガードしたアーセンはグラウンドで上になるが、宮田は下から三角絞めの構え。アーセンは抱え上げてマットに叩きつけて脱出した。客席からは「宮田」コールが発生する。続く三角絞めもアーセンはマットに叩きつけてまたもや切り抜けたが、宮田は下からアームロックに捕獲。一気にポジションを入れ換えて絞め上げる。アーセンは何とか腕を引き抜いて切り抜けた。

 2ラウンドになると、宮田は左のジャブを多用し、右ローキックも見舞う。だが、アーセンはワンツーで対抗すると、右のストレートを発射。ぐらついた宮田を寝かせて、ガードポジションとなった。距離がないところでは左ヒジを突き刺し、離れると右のパウンドを振り下ろす。ヒザも使っていくが、宮田はアーセンの右腕を背中側で片手で極めるアームロックに捕らえて一気にギブアップを奪取。引退試合で劇的な一本勝ちを手にした。

 5連勝で引退を迎えることになった宮田は、アーセンと握手を交わすと、「アーセン選手、強かったです。本当に僕もデビューしたての時はいきなりグレイシーとか、それこそKID選手とか強い選手とやって、なかなか結果出なかったですけど、14年やって、ようやくそこそこのレベルに行ったと思います。本当にお世辞抜きでアーセン選手は凄く強くて。テイクダウンされたし、力もあるし、物凄い才能を持っている選手なんで、これから頑張ってもらいたいと思います」とエールを送った。

 そして、「今日の試合で引退することになりました。うちの後輩たちも今のところ5人チャンピオンになって。うちに入ってきた後輩たちは全員チャンピオンにしたいと思います」と力強く宣言すると、「引退試合をこのRIZINの舞台でやらせてもらって、物凄く感謝しなければいけないと思います。これからは日本の格闘技界を後押しできるように頑張ります。ありがとうございました」と頭を下げた。

 最後に、試合を観戦していた愛息から花束を受け取り、「今日は試合を見れて本当によかったです。昔から僕のヒーローで、ずっと見てて、最後に勝てて本当によかったです。ありがとう」と称えられた宮田は、笑顔で14年の選手生活に幕を下ろした。

 KID戦で秒殺負けしたことがキッカケとなり、「世間に弱いところを見せちゃったんで、見返してやりたいなと思って、長く続けてこれたんだと思います」と現役生活を振り返った宮田。「なので、アーセン選手も間違いなく強くなると思うんで、いいところだけを見ないで、そのまま続けてもらいたいなと思います。それは僕が勝っても負けてもいいたいなと思いますんで」とバックステージでもアーセンを激励していた。

【試合後の宮田】
――試合を振り返ると?

▼宮田「途中、覚えてないんですけど、レスリングが強かったなと思いました」

――覚えてないというのは?

▼宮田「夢中になって。今は試合が終わったばっかりなので」

――実際に戦ってみたアーセン選手の印象は?

▼宮田「やっぱり力が凄くあるというか、レスリング的な力があるんで、柔術系の技は全部持ち上げられちゃうし。これから時間はかかると思いますけど、凄くポテンシャルがある選手だと思いました」

――試合展開は宮田選手が下から制圧しているように見えたが?

▼宮田「そうですか? 1ラウンドは負けてるかなと思って。余裕は全然なかったです」

――フィニッシュのあの極め方というのは想定していた?

▼宮田「そうですね。アームロックは一番得意な技なんで。寝技に関しては相当やりこんでいるんで。最初はうちの課題が寝技だったんで。14年やってますけど、長くかかりましたけども。もともとレスラーなんで、トップポジションからしかやってなかったですけど、練習ではいつも下からもやるようにしているんで、今回は出したいなと。レスリングが彼は強いんで、そこで張り合っても。僕も歳なんで、手を付いたりして肉離れをしちゃったり、凄くそういう怪我が多いんですよ。そこはあんまり無理しないように、下になってもできる自信があるんで」

――今日の試合で総合格闘家としての完璧な状態が作れた?

▼宮田「そうですね。やっと楽しくなってきたぐらいで辞めるのはちょっともったいないですけど、これから物凄く強くなるってことはないので。まあ、格闘技においては日本は低迷期ですが、レスリングだと僕がやっていた時代より凄くレベルが上がっていて。19歳の世界チャンピオンが出ているし、もちろん女子は世界一だし。そういうレスリングがベースの子たちがいっぱいいるんで、彼らたちが総合格闘技をやれる環境においたら、また復活すると思うんで、そっちに力入れたいですね」

――今日の試合で全て出しきれた?

▼宮田「結果は勝てたんで、あんまり贅沢言わないように」

――ゴング直後にKID選手のようにヒザ蹴りを出したのは最初から狙っていた?

▼宮田「あれはやらなきゃダメだなって。昨日、ルールミーティングの時に榊原さんの話を聞いて、勝ち負けだけじゃアマチュアなんで。プロなんでと意識してやれることはそれぐらいかなと思って。それは決めてきました」

――アーセン選手も飛んでくる可能性もあったと思うが?

▼宮田「アーセン選手も飛んでくると思っていたんで、想定内というか」

――最後の技はよく使う技?

▼宮田「そうですね。寝技は結構いろいろ楽しくてやってます。組み技は筋トレになるし、筋肉を落とさないように。まあ、運動もできるし、強くもなれるし。打撃のほうは年齢的に目が悪くなったりとかしたくないので、ちょっと抑えて練習してます」

――今日はあえて下になるのを選択した?

▼宮田「勝負しないであえてわざと下になったというところまではないですけど。上になれれば上になりたいですけど、相手も若くてレスリングが強いんで。普通に負けたんだと思いますけど、無理しなかったというのもあります」

――改めて14年間やってきてどう感じている?

▼宮田「僕は27歳までレスリングをやって。28歳から総合に来たんですけど、真剣勝負にちょっと疲れてて。オリンピック選手で転向するほとんどの選手が2、3年やって辞めちゃうと思うんですけど、僕も長くやれるかわからなかったですけど、KID選手と試合をしてああいう形になったし、今のアーセン選手も期待されて入って、凄くキャリアのある強い選手といっぱいやっていると思うんですけど、それで世間に弱いところを見せちゃったんで、見返してやりたいなと思って、長く続けてこれたんだと思います。なので、アーセン選手も間違いなく強くなると思うんで、いいところだけを見ないで、そのまま続けてもらいたいなと思います。それは僕が勝っても負けてもいいたいなと思いますんで」

【試合後のアーセン】
――試合を振り返ると?

▼アーセン「試合は思った以上に…こんなこと言っちゃいけないかもしれないけど、思った以上に勝てるなって確信していたというか。3ラウンド目で決められるかなって自分の頭の中で思ってたんですけど、やっぱ宮田さんが寝技が上手くて。自分のちょっとしたミスからあんな技に繋がったんで。うーん、悔しいですね」

――宮田選手は1ラウンドを取られたかと思ったと話していたが?

▼アーセン「やっぱ寝技で取られてたんですけど、自分は修正できるなって感触があったんですが、やっぱり本当に小っちゃいミスが大きいミスに変わったという感じですね」

――小さいミスというのは?

▼アーセン「グラウンドで手を地面に置いていたことです。それで全部手をコントロールされて。1ラウンド目から全部。だからキムラに繋がったりとか全部。自分が手をついて、これでパスしようという変な考えさえなければ。本当に自分の考えの甘さだと思っています。手を置かずに、相手のお腹だったり、胸だったりに置いていれば、ああいうことは起きなかったんですけど。いい経験になりました。これでMMA何戦目かな? 5か6試合目なんですけど、本当に毎回いい選手と戦わせてもらって、いい経験をさせてもらって。勉強になったことを次に活かせるように頑張りたいと思います。もう本当に悔しくて。疲れてないし、どこも痛くないし、試合をやった気になってないです。ただ負けたっていう現実が凄い頭の中でグルグル回っている状態です」

――改めて宮田選手に感じたことは?

▼アーセン「いや、力も強くて、技も頭が切れてたと思います。凄い偉大な選手だと思います。そして、引退試合に自分を選んだもらったことを凄く感謝してます」

――最初のヒザ蹴りは考えていた?

▼アーセン「自分は正直、インターネットとかで『1ラウンド目にヒザ蹴りをお願いします』とか言われてて。これはわかっているかなと思ったんで、2ラウンド目か、3ラウンド目ぐらいに相手の様子を見て、ゴング直後にやってやろうと思ったんですけど、1ラウンド目に宮田さんが飛んでくるのはだいたい予想済みだったというか。もちろん引退試合だったんで、派手に終わらせたいだろうなと思っていたんで。全部わかっていたとは言い切れないですけど、たぶん来る可能性もあるかな、それだけは気をつけようと思ってたんですけど。やらないまま終わっちゃって、結構悲しいですね」

――今回は宮田選手の引退試合であり、KID選手のメモリアルとなったが、試合そのものを振り返ると?

▼アーセン「結果が全てなんで、0点だと思います。自分の中でメモリアルマッチというのは1回も考えてなくて。練習期間も試合前日も。もちろんノリさんのためにやったというのはあるんですけど、やっぱりやるのは自分だし、勝つのは自分だし、負けるのも自分だし。結局、自分なんで。メモリアルというのは本当に考えなかったですね。とりあえず俺は勝ちに行こうと。平成最後だし」

――前日会見の時にきっとセコンドにKID選手がいるだろうと話していたが、どんな言葉をかけられていたと思う?

▼アーセン「大丈夫、大丈夫、練習だから。これから練習をもっとすれば大丈夫だからってたぶん言っていると思います。たぶん本人も凄い悔しい思いをしていると思います。でも、凄い不思議なことで、自分は普段緊張をしているタイプなんですけど、今回は本当にまったく緊張がなくて。ただ自分が勝つイメージしかしてなくて。たぶんこれ、ノリさんがすぐ側にいるから安心しているんだなっていうのは感じてました」

――今後については?

▼アーセン「目標は、とりあえず自分、子供が2月に産まれるんで、まず健康に産まれてくるのを見届けて。バッチバチ練習して、会場を沸かせながら、全試合勝っていこうかなって思います。凄い負けてもちろん悔しいし、結果が全てなんですけど、自分は今回、ちゃんといいところで練習しているなって思ったのと、自分の居場所はここなのかもしれないなと改めて思えた試合だったので、宮田さんにも凄い感謝してますし、こうやって負けているのに、何回も何回も呼んでくれているRIZINの皆さんに感謝したいと思っています」

――宮田選手からは激励の言葉があったが、直接声をかけられた?

▼アーセン「はい。舞台裏で、『ありがとうございました、お疲れ様でした』ってあいさつをしに行ったら、『お世辞なしでアーセンは強いから、このままちゃんとやれば本当にいい選手になるから、頑張ってね』って言葉をかけられて。本当に正直、素直な気持ち、嬉しかったです。そしてまた、モチベーションが。やっていることが正しいんだっていうことに気付けたんで、負けは負けですけど、凄い自分の中で道が開けたっていうのもおかしいですけど、しっかり道が見えてきたなっていう。やっぱ最初は『なんでこんな強い選手ばっかりとやんないといけないんだよ』って気持ちだったですけど、今は『関係ねえ。誰でも来いよ』っていう。『ただ、そのぶん、練習してやるから』っていう気分です」

――自分の身の丈にあった対戦相手と組まれたらやってみたいという気持ちもある?

▼アーセン「もちろんどこでも試合はやります、自分は。でも、とりあえずRIZINで結果が出せると思うんで。今回、肩の怪我の手術をして、時間がドンって空いて。凄い考える時間が。最初は格闘技のビデオとか見れずに、ちょっと恐怖症っぽいのを感じてて。ああ、どうしようかなって考える時間から、ドンドンドンドンモチベーションに変わっていって、『俺、やっぱり格闘技やりたいわ』って気持ちに変わって。ノリさんの葬式でも言ったんですけど、本当にやっと今、格闘技の楽しさがわかってきたんで、これから見といてくださいっていう。みんなに見捨てられるかもわからないけど、楽しみにしといてください。本当にここから強くなると思うので、自分は」

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