【RIZIN】天心が異例の3人掛け、所と対決実現 RIZINラストマッチは大みそ日に 2021/6/13 19:00

『Yogibo presents RIZIN.28』東京ドーム(2021年6月13日)
「那須川天心vs3人」スペシャルマッチ
△那須川天心vs大崎孔稀△
△那須川天心vsHIROYA△
△那須川天心vs所英男△

 天心がキック禁止ルールで異例の3人掛けに挑戦。所との対決も実現した。最後まで戦い抜いた天心は、来年3月のボクシング転向を前に、毎年恒例の大みそ日決戦をRIZINラストマッチの舞台に指定した。

 44戦無敗の“神童"天心は、当初K-1王者・武尊との対戦を予定していたものの、武尊の怪我などの影響もあって実現できず。そこで、RIZIN出場が決定。対戦相手が決まらず、異例となるキック禁止ルール(バックハンドブローはあり)での3人掛けに挑戦することになった。

 1人目は天心と同じくRISEを主戦場とし、24勝5敗1NCの戦績を誇る大崎。いきなり激しく拳を交錯させる。フットワークで距離を保ちつつ、ボディブローも散らしていく天心は、パンチをもらう場面もあったものの、終盤にはアッパーをヒットさせた。

 2人目はK-1マットで活躍してきたHIROYA。引退を見据えているとはいえ、前日計量の時点で体重が約13kg上回っており、体格面では天心が圧倒的不利な状況となった。ガードを固めて前に出るHIROYAに対し、天心はスピードで対抗。手数で上回り、ボディブローも的確に打ち抜くと、HIROYAの大振りのフックをキッチリとガードする。終盤には右アッパーからの左ボディアッパーでダウンも奪ってみせた。

 そして、3人目の当日発表となったXは総合格闘家の所英男。これまで数々の番狂わせを巻き起こしてきた総合格闘技歴20年のベテランが東京ドームの大舞台で天心の前に立った。所はロングレンジからフックやバックハンドブローを放ち、前に出るが、天心は慌てずに試合を展開。スピードで凌駕して、コンビネーションで一気呵成に畳みかける。右フックでぐらつかせると、左右の連打で猛攻。ダウンを奪うには至らなかったが、3人目でも天心の動きが鈍ることなく、戦い抜いた。

 異例の3人掛けを乗り越えた天心はマイクを持つと、「皆さん、コロナ禍の中、集まってくださり、本当にありがとうございます。1対3マッチ、なかなか賛否があって、僕もやるのかやらないのかすごいドキドキしましたし、こういった試合をやってもいいのかなと思ったんですけど。でも、こうやってテレビで格闘技が放送されるということで、こういう試合に挑むと決めました」と異色の試合に挑んだ理由を告白。「そして、戦ってくれた大崎選手、HIROYA選手、所選手、本当にありがとうございます。なかなか僕が対戦相手が決まらない中で、こうやって勇敢に戦ってくれた選手はなかなかいないんで」と3人の対戦相手に敬意を示した。

 そして、「僕は来年3月をもってキックボクシングを卒業して、ボクシングの道に専念します。悲しいですけど、次の年末がキックボクシングで、RIZINで最後の試合となります。大みそ日でRIZINは最後なので、楽しい試合をしたいなと思いますし、こうやってRIZINはすごいブームだと思うんで。東京ドームで試合ができて嬉しかったです」と大みそ日をRIZINラストマッチの舞台に指定した。
 「僕はボクシングに挑戦するんですけど、今はキックボクシングで無敗で、こういう立場でボクシングに挑戦するのは怖いのかと言われるんですけど、僕は挑戦しないほうが怖いと思います」と自分の現在の立場を示しつつ、「ちょっとした失敗なんて失敗じゃないし。今、何かをやろうと思っている人。心の中に止めておくんじゃなくて、行動に移して、しっかり口に出して、突っ走っていけば、自ずとみんながついてきてると思うので。そういう信念を持って、皆さんにチャレンジしてほしいです」と熱くメッセージ。最後に「僕は本気で、ボクシングで世界チャンピオンを取ろうと思ってます。皆さん、この那須川天心という者に夢を託してください。僕は絶対にやってやります」と夢のボクシング世界王座奪取を東京ドームで誓った。

 コメントブースでは「こんなことできる人はなかなかいないでしょうというのはありますし、皆さん賛否両論あったんですけど、人生で一生経験できないことなので。なかなか得られない体験だったのかなと思います」と充実感をあらわにした天心。今回は特殊な試合形式になったが、大みそ日のRIZINラストマッチに向けて、「しっかりと準備した試合をして、みんなに送ってもらえるような試合をしたいなと思います」と意気込んでいた。

【試合後の天心】
――試合を終えた今の心境は?

▼天心「本当に今後絶対にない経験ができたというか。いつもの試合という感じとはちょっと違ったんですけど、毎ラウンド相手が元気な状態でっていう感じが、すごいやりづらさを感じて、非常に疲労感が今はありますね」

――今までにない新しいルールだったと思うが、それに挑戦したことについては?

▼天心「パンチもほぼほぼもらわずに当てることができたので、今後に活きるいい経験ができたかなあとは思いますね」

――今回、作戦はあった?

▼天心「いや、作戦立てれないですよね、正直。作戦って3ラウンドだったり、5ラウンドだったりというのがあるから、作戦が立てられるんであって、1ラウンドだったら、もう何してくるかもわからないですし。しっかり相手のことを見なければならないですし、もらってしまうとダメージは蓄積しますし。そういうことをしないようにっていうのを気をつけてました。だから、打ち切りのパンチが多くなっちゃったんですけど、もっとどんどんどんどん散らしとかを打っていければよかったのかなとは思いますけど。まあ、いつもと違う試合なんで、これはこれでよかったかなと」

――所選手と戦ったことについては?

▼天心「まさかやるとは思ってなかったんで。向かい合うということはすごい嬉しかったですね。なんで、非常に感謝しています」

――東京ドームでの試合はどうだった?

▼天心「広かったですね。広かったですし、憧れというか、ちょっと悔しい感じがあったんですよ、昔から。東京ドームでのライブとか、東京ドームでコンサートとかがやってて、俺もいけるでしょってずっと思ってたんで。やっと同じ位置に立てたかなって思いますけど」

――今後の展望は?

▼天心「大みそ日の試合がRIZINでの最後の試合だと思うんで。なかなか悲しいというか。キックの試合は来年の3月か4月のRISEで卒業なんですけど、RIZIN卒業は次の試合で最後なんで。なんか悲しいですよね」

――最後の試合はいろんな人に見てもらいたい?

▼天心「そうですね。そこはしっかりと。今回、賛否両論あったし、いろいろ僕の中でも思うことはあるんですけど、しっかりと準備した試合をして、みんなに送ってもらえるような試合をしたいなと思います」

――3人と戦ったが、一番手応えがあったのは?

▼天心「まず僕が力みすぎたというのはありますね。試合を組み立てるというよりかは、相手に対応するっていうのが精一杯だったんで。各選手ラウンドを終えるごとに、『ああ、ここが効いてるからここのフェイントをしよう』とかっていうのがあるんですけど、そういうのがまったくできなかったんで。1ラウンド目はすごい硬くて、2、3でだんだんほぐれてきたかなって感じはありましたね」

――蹴りを使いたいという気持ちはあった?

▼天心「それはなかったですけど、でも蹴りがあったら、もっと早く倒せるだとかっていうのは思ったんですけど、それは大丈夫でした」

――3人とやっていく中で、これは嫌だなとか、これはすごいなとか、新しい発見や気づきはあった?

▼天心「やってては思わなかったですけど、終わってみてですよね。こんなことできる人はなかなかいないでしょうというのはありますし、皆さん賛否両論あったんですけど、人生で一生経験できないことなので。なかなか得られない体験だったのかなと思います」

――最初に入場ゲートから出てきた時に見えた景色はどうだった?

▼天心「これがドームかっていうのはあったですけど。今の状況だから、満員というのは難しいですけど、こういうコロナの状況がなくても、満員にできるぐらいの力がRIZINにはあると思うんで。今度は満員にして、いつか試合はしたいなと思いますけど」

――大崎選手と試合後に話をしていたが、どんな会話をした?

▼天心「彼が結構早い段階で、一番最初ぐらいの感じで名乗りを上げてきてくれたんで。『なんでやろうと思ったの?』って聞いて。『やっぱチャンスだと思いました』って言ってたんで。昔の僕に似ているなみたいな、そういう感覚はありましたね。なんで、そういう会話をして。彼も21歳なんで、やっぱり枠からはみ出ないといけないっていうのは、僕もずっと思ってたことですし、彼もそういう風に思ってチャレンジするっていう風にしてくれたんで、今後、僕がいなくなっても、そういった選手がいるっていうのは非常に嬉しいなと。『嬉しく思うよ』って会話をしました」

――1R目は硬かったという話があったが、それを差し引いても、大崎選手の動きはどうだった?

▼天心「上手かったですね。思ったより上手かったですよ。やっぱりずっと勝ち続けているだけあって。大崎兄弟はずっと勝ってるじゃないですか。それだけの実力はあるなっていうのは思いましたね」

――こういう変則的な試合をやるにあたって、お客さんや視聴者に何を見せたい、何を残したいという気持ちはあった?

▼天心「本音言うと、ちゃんとした試合をしたかったというのはありますけども、どちらかと言うと、テレビ向けの試合だったのかなとは思いますね。インパクトあることをしていかないと視聴率も取れないですし、それは自分もわかっているんで。もともとやるかもしれない試合とかもありますし、それがいろいろ流れて、相手が調整合わなくてなくなってというのも繰り返した中で、最大限できることをやったかなっていう。ちゃんとした試合ができるのは一番なんですけど、こういった形でやるっていうのも、冒険的でいいのかなと思いましたね。もうやりたくはないですね」

――「3人とも倒してほしい」という期待をされていると思った?

▼天心「そうなんですよ。だから、力んじゃったんですよね。最初の1分半とか、ガッチガチだったから、これはヤバいなと思って。そこで切り換えられたっていうのもデカいですね。やっぱいつもより疲れましたね」

――相手が1ラウンド毎にフレッシュな状態で、体重差もあった。それについては?

▼天心「体重差は感じましたけど、全員が全員パンチの打ち方とかも違うんで、だからいつもより距離を取らなきゃいけない。でも、1ラウンドしかない。で、HIROYA選手の場合は10何キロも体重差があるんで、もらってはいけない。でも、攻めなきゃいけない。いろんな葛藤が試合中にあったんで、いつもの試合より疲れましたね」