約1ヵ月にわたって全国各地で激闘を繰り広げてきた2024年のG1も最後の試合を迎えた。優勝決定戦はAブロック代表のザックとBブロック代表の辻によるどちらが勝っても初優勝となる新鮮な顔合わせに。ザックが勝利すれば、ケニー・オメガに続き2人目の外国人優勝、そしてイギリス人初優勝に。辻が勝利すれば、NEW JAPAN CUPに続いて前人未到の春夏連覇に。記録のかかった大一番となった。
そして、内藤哲也が保持するIWGP世界ヘビー級王座獲りに照準。近年はG1覇者が翌年の1・4東京ドーム大会で挑戦するのが習わしとなっていたが、ザックは「1・4はチョット遠いね」と注目発言。「ザックがリョーゴクが一番好きだよ。じゃあ、リョーゴク、タイトルマッチがいいと思う。だから、次の両国大会、いつだっけ? 10月14日、『Road to KING OF PRO-WRESTLING』。ザック、IWGP世界ヘビー級挑戦する!」と10・14両国大会での挑戦を表明した。
『ヤマダインフラテクノス Presents G1 CLIMAX 34』東京・両国国技館(2024年8月18日)
優勝決定トーナメント・ファイナル ○ザック・セイバーJr.vs辻陽太×
ザックが辻を撃破して、初のG1制覇。喜びを爆発させたザックは、電撃引退したNOAH時代の師匠・小川良成に感謝の言葉を送ると、10・14両国大会でのIWGP世界ヘビー級王座挑戦をぶち上げた。
約1ヵ月にわたって全国各地で激闘を繰り広げてきた2024年のG1も最後の試合を迎えた。優勝決定戦はAブロック代表のザックとBブロック代表の辻によるどちらが勝っても初優勝となる新鮮な顔合わせに。ザックが勝利すれば、ケニー・オメガに続き2人目の外国人優勝、そしてイギリス人初優勝に。辻が勝利すれば、NEW JAPAN CUPに続いて前人未到の春夏連覇に。記録のかかった大一番となった。
“元祖・夏男"の蝶野正洋がテレビ解説席に道場。早くも場内が沸騰して、両国国技館は熱気ムンムンに。両雄が向かい合い、ゴングが鳴ると、割れんばかりの「陽太」コール、「ザック」コールに包まれた。ザックは辻の左腕に照準。得意の関節技で一点集中攻撃を展開して、自分のペースに持ち込む。辻も捨て身のトペスイシーダを皮切りに、ジーンブラスターにつなげるべく腰と腹部に攻撃を重ね、試合は消耗戦の様相に。
感情むき出しの接戦に両国はさらにヒートアップ。ザックは腕へのダイビングフットスタンプなど容赦ない腕攻めで押し切りにかかると、スキを突いてのヨーロピアンクラッチで揺さぶり、さらにギアを切り換えて投げ捨てジャーマンまで見せたものの、すぐさま動いた辻がジーンブラスターをぶち込んで、両者大の字となった。
息を吹き返した辻はセブンティークロス(変型スパインボム)、カーブストンプ、マーロウクラッシュ(コーナーからのカーブストンプ)と怒とうの大技攻勢。2発目のジーンブラスターで仕留めにかかるが、ザックは空中で左腕を絡み取ってピンチをチャンスに変えた。腕固め、そこから変型羽根折り固め、さらには三角絞めに移行する。
粘る辻は強引に投げ捨てて逃れると、攻撃を再開。飛びヒザ蹴り連発でザックを足止めし、雪崩式セブンティークロスを敢行する。準決勝のデビッド・フィンレー戦でも見せた同期・上村優也の必殺技カンヌキスープレックスは不発に終わったものの、ザックの裏をかいて、掟破りの逆ザックドライバーで突き刺した。
そして、またもジーンブラスターを狙って突っ込むが、ザックも執念を発揮。空転させて後方に丸め込むと、さらにNOAH時代の師匠・小川ばりの四の字ジャックナイフ固めで押さえ込んだ。懸命に肩を上げた辻は勝負を捨てず、ザックドライバーをスタナーで切り返すと、ロープを往復して、こん身のジーンブラスターへ。これを三角絞めでキャッチしたザックはクラーキーキャット(変型羽根折り固め)へ移行。さらに、両足を使った羽根折り固め、そして足関節まで極める複合技へと次々と切り換えながら、辻を絞め上げて次にギブアップをもぎ取った。
ザックが熱闘を制してG1初制覇。外国人選手としては8年ぶり2人目、イギリス人選手としては初のG1優勝を果たした。春夏連覇を逃した辻がセコンドの肩を借りて去っていくと、辻にも大きな声援が降り注いだ。
TMDKの仲間たちに祝福され、優勝トロフィーを受け取ったザックはそのトロフィーにキスする。蝶野から優勝旗を贈呈されると、喜びを爆発させた。両国から大歓声が飛ぶと、ザックは感極まり、リングに座り込む。「ザック」コールを浴びて大きく頷くと、マイクを手にした。
ザックは「勝ちました!」と日本語で雄叫び。最初に口にしたのは、今月13日に電撃引退を表明したかつての師匠・小川についてだった。苦楽を共にし、GHCジュニアヘビー級タッグ王座を一緒に巻いた師匠に対して「最初はヨシナリ・オガワ、オガワセンパイ、プロレス人生お疲れ様でした。全部ありがとうございました」と頭を下げて感謝のメッセージを送り、「オガワさん、やりました!!」と感情を爆発させた。
そして、内藤哲也が保持するIWGP世界ヘビー級王座獲りに照準。近年はG1覇者が翌年の1・4東京ドーム大会で挑戦するのが習わしとなっていたが、ザックは「1・4はチョット遠いね」と注目発言。「ザックがリョーゴクが一番好きだよ。じゃあ、リョーゴク、タイトルマッチがいいと思う。だから、次の両国大会、いつだっけ? 10月14日、『Road to KING OF PRO-WRESTLING』。ザック、IWGP世界ヘビー級挑戦する!」と10・14両国大会での挑戦を表明した。
「今日はとりあえずみんなありがとう。以上!」と日本語で締めくくったザックにきらびやかな銀テープが降り注ぐ。ザックは花道を下がらず、トロフィーを持って場内を練り歩くと、観客も大歓声で祝福し、ハッピーエンドで2024年のG1は幕を下ろした。
バックステージでもザックは「彼は死ぬ日までレスリングを続けると思っていたけれど。でもオガワサンのやり方は……何も言わずに去るなんて、彼以上にクールに引退できる人なんていないね。なのに大げさに騒いでしまって、彼が怒っていないといいけれど。オガワサン、本当にありがとうございました」と小川への思いを吐露。試合で見せた4の字ジャックナイフ固めについても「たぶんショッパイ。オガワサン……どうでした? すみませんでした。4の字ジャックナイフ固めは難しいよ」とこぼしていた。
「ニュージャパンのトップになることがいつも俺の夢であったけれど、日本のキャリアはプロレスリング・ノアから始まった。皆本当に親切で、リスペクトと愛をもって俺を育ててくれた。俺の心にはこれからも方舟がある。NOAH道場での日々を称えるために俺ができる最善のことは、日本のプロレス界の頂点に立つことだ。それを10月に成す」と決意を語ったザック。その先には今大会で発表になった10・20ロンドン大会や来年の1・4東京ドーム大会での防衛戦も視野に入れている。新日本とNOAHで培ってきた技術を活かし、次は悲願のIWGP世界ヘビー級王座獲りを狙う。
一方、敗れた辻の前には公式戦で敗れた雪辱を狙うTV王者ジェフ・コブが登場。「俺は勝利を取り戻したい。いつでもどこでもいい。復讐がやって来るぞ。このベルトを懸けてもいい」と要求すると、辻も「いいだろう。断る理由もねえ」と受諾し、両者のタイトルマッチも決定的となった。
【試合後のザック】
▼ザック「(※日本語で)絶対飲みたい。ちょっと早く」
▼ニコルス「イェー、よくやった」
▼ザック「(※ビールを配りながら英語で)俺はどこに……?」
▼イーグルス「気にしないよ」
▼ザック「(※日本語で)じゃあ……(※メンバーと乾杯)」
▼イーグルス「乾杯!」
▼ニコルス「イェー。よくやった。(※4人でハグ)」
▼藤田「おめでとう、ザックさん」
▼イーグルス「(※日本語で)おめでとー」
▼ザック「(※英語で)最初に、TMDKなしに、これは成し得なかった。特にマイキーとシェイン。日本にいる間の時間は、いつもマイキーとシェインの存在があって、二人がいなかったら、ここまでできていたかわからない。だから二人に乾杯(※マイキー投げキスを返す) ありがとう。ありがとう」
▼ニコルス「乾杯だ」
▼ザック「(※日本語で)おいしいね。お酒、ちょっと久しぶり。(※英語で)よし。ちょっと長くおしゃべりするよ」
▼ニコルス「マジか(※わざとらしく)驚きだな」
▼イーグルス「ハハハ」
▼ザック「おしゃべりだなんて言われたことない」
▼マニコルス「よし(※と言って、マイキー、ロビー、藤田は先に控室へ)おめでとう」
▼ザック「(※旗を持って)これ、コークン……(※スタッフが旗を引き取ると)肩をケガしてるからな。そこに立てておいて。(※日本語で)よかったです。絶対よかった。(※英語で)8年。キャリアの中で初めて、自分に疑問を感じ始めていた。『G1』で優勝できるか? 自分で望み描いたほど、自分は優れているか? 今年でなければ……今年は俺にとって最後のチャンスだった。ニュージャパンのトップに立つための。俺の関心は日本ではなかった。キャリアの中の足がかりだった。2002年、NWAハンマーロックジムでの初めてのトレーニングの時に決めた俺の目標……その時、俺はすでに公式の(プロレスの)ビデオテープを手に入れていた。雑誌の後付けコーナーに載ってる、現金を送るのと交換で祈りながら届くことを待つ無許可のVHSテープじゃなくてね。トレーニング初日を迎える前の時点で、俺はすでに日本に狙いを定めていた。これが俺の最終目的じゃない。俺の最終目的は……ここにいられるというだけで、俺は満足してない。俺は日本で最高のレスラーになるためにここにいるんだ。そしてそれは今年でなければいけなかった。今年しかなかった。『G1』……『G1』はステップその1だ。(※日本語で)次は、IWGP世界ヘビー級チャンピオン。(※英語で)ステップ3、トーキョードームのメインイベント。皆、ステップ2と3をセットで考えていると思う。でも、ファンとしての俺は、トーキョードームのタイトルマッチまで待つなんて、退屈だしバカげてると思う。本当に面白くない。(※日本語で)面白くないよ。(※英語で)わがままだが、8年ニュージャパンで過ごし、20年この業界で過ごしたんだ。これ以上待てない。それにリョーゴクでなきゃ。ファンサービスってだけじゃなく、世界で一番、ここでレスリングをするのが好きなんだ。リョーゴクコクギカンみたいな会場はどこにもない。それに『Royal Quest IV』が発表された。英国のファンをないがしろにするようなことはしたくない。IWGP世界ヘビー級王者として英国に帰り、『Royal Quest IV』で防衛戦ができたら素敵だと思う。ハンマーロックレスリングの俺の最初のトレーナーを称えたいんだ。日本での目標達成に関する話では、俺はいつも日本からの影響について言っているけれど、ハンマーロックレスリングのスクールでの日々がなければ、俺はプロレスラーになっていなかった。アンドレ・ベイカーの名はよく出ていると思う。彼ほど俺に影響を与えた人はほとんどいないけれど、NWAハンマーロックにはジョン・ライアンという隠れたヒーローもいるんだ。その名を少しでも広めることができれば。なよなよしたバカな14歳のガキであった俺にとって、この二人がメンターだった。自分が何をやっているのかもよくわかっていなかったが、彼らのお陰で、テクニカルレスリングへの愛は育っていった。英国人レスラーであったからこそ、今の俺がある。ただのなよなよしたガキが、ここまでのことを成せるはずがない。ハンマーロックレスリングとブリティッシュスタイルレスリングのお陰だし、死ぬその日まで、俺はその存在を守り続ける。そして、その次に重要な人物が、リング上でも感謝したヨシナリ・オガワだ。彼は死ぬ日までレスリングを続けると思っていたけれど。でもオガワサンのやり方は……何も言わずに去るなんて、彼以上にクールに引退できる人なんていないね。なのに俺が大げさに騒いでしまって、彼が怒っていないといいけれど。(※日本語で)小川さん、本当に、ありがとうございました。(※英語で)ニュージャパンのトップになることがいつも俺の夢ではあったけれど、日本でのキャリアはプロレスリング・ノアから始まった。皆本当に親切で、リスペクトと愛をもって俺を育ててくれた。俺の心にはこれからも方舟がある。ノア道場での日々を称えるために俺ができる最善のことは、日本のプロレス界の頂点に立つことだ。それを10月に成す。『KING OF PRO-WRESTLING』で、その時の王者が誰であれ。年老いたバカナイトーの予定がどういうつもりかは知らない。10月の時点の王者が誰かなんて気にしない。大事なのは、この美しい会場で、俺が王座に挑戦するってことだ。普段は自分が面白いと思う抽象的で変なことを話すけれど、長い『G1』でネタが尽きた。とびきりの話はもう出てこないし、質問があれば。1回ぐらいは、記者のために生産的な答えをしてみるよ。(※日本語で)じゃあ……」
――小川さんの技を使いましたね。その時の考えは?
▼ザック「(※日本語で)たぶんショッパイ。たぶん小川さん……どうでした? すみませんでした。4の字ジャックナイフ固めは難しいよ。小川さんは最強。すみませんでした、小川さん。すみませんでした。ハイ、次」
――改めて両国国技館で満員の観衆の中で、『G1』を優勝して聞くザックコールはどういうお気持ちで聞いていたのでしょうか?
▼ザック「(日本語で)初めて……たぶんですね。たぶん、昨日と今日は(両国のコールは)初めて。ウレシイ! ホントにウレシイ! 最初、新日本に入って、絶対ヒール、鈴木軍(だったし) もちろん、ヒールはスキ。自分のスタイルは、たぶんナチュラルヒールですね。でも、お客さんの応援、凄いモチベーション(になった) (自分は)外国人ですね。辻サン、凄いポテンシャル。たぶん、みんなジェネレーション。みんな若い選手、ガンバロウ。ザックコール、くやしかった(のでは?) また、ミナサン、お願いします」
――今のチャンピオン内藤選手に挑戦するか、この後のスケジュールはわからないんですけど、今『G1』を獲って、さらにチャンピオンになりたい、自分がチャンピオンになりたい、どういう気持ちですか?
▼ザック「誰とレスリングしたいかということ?」
――誰と試合したい?
▼ザック「好みの対戦相手だとは互いに言わないが、俺のニュージャパンでの8年、俺たちの間にはずっとつながりがあったと思う。それぞれ、『NEW JAPAN CUP』や『G1 CLIMAX』を勝ち破って進んだ経験がある。(シングルの)タイトル戦の可能性はあったが未経験だ。(※日本語で)いいヒストリーですね。(※英語で)次のチャプター。(※日本語で)ナイトー、もちろんやりたいですけど。じゃあ、あと『G1』誰、ナイトーさんに勝った? オーカーンと、タカギ? あと誰? EVIL。(※英語で)EVILは消えろ。(※日本語で)タカギさんは昨日勝った。オーカーンは、たぶん一番面白いね。いや、本当にオーカーンは大リスペクト。すごい、選手。この『G1』すごい頑張ったね。じゃ、どっちでもいいよ。(※英語で)気にしない。ただ挑戦したい。ほかに質問は?」
※ここでDDTのクリス・ブルックスが登場
▼ブルックス「(※日本語で)めっちゃカッコよかったよ!おめでとうございます! (※ザックとハグすると)めっちゃ泣いちゃったよ。おめでとうございます!」
▼ザック「もっと日本語……」
▼クリス「勉強します! カンパイします! お疲れ様でした! 最高でした」
※ブルックスがその場で一気にビールを飲み干す
▼ザック「早いよ! 早ッ!」
▼ブルックス「(遠くの方から)おめでとうございます!」
※報道陣から大拍手
【試合後の辻】
▼辻「(※嘉藤に肩を借りてやって来て)ここまで1カ月、闘ってきたけれども、かつてないほど節々痛くても、コンディションは良かった。でもさ、最後に負けちゃ、最後に負けるのと勝つとでは雲泥の差なんだよ。でも、そんなこと言ってちゃ、俺はBブロックで闘ってきたアイツたちに顔向けできない。最後、決勝で勝てなかったかもしれないけど、俺は全力を尽くした。この準優勝という結果は、届かなかったかもしれないけど、立派な結果だと思う。ただ、俺の中で悔しさはある。この結果を満足するわけじゃないけど、堂々と胸を張って受け入れたいと思う」
▼コブ「(※突然、缶ビールとNJPW WORLD認定TV王座のベルトを持って、コメントスペースにやって来て)ツジ、ツジ! 『G1』頑張ったな、よくやったよ! カンパイ! エェ? 勝たなかったのか!? 負けただと? ゴメンナサイ。とりあえずカンパイだ。まあ聞いてくれ。心配するな。今ここでお前を殴ろうってわけじゃない。『G1』は終わったんだ。俺が望むのはリベンジだよ。ツジ、『G1』で俺を倒してここまで来て、それで決勝で負けたのか? 情けない男だ! 実に情けない! それが"新世代"か? 俺が"今の世代"だ。もし俺が(お前に)勝っていたら、あそこで今トロフィーを手にしているのは俺だったよ。だからな、ツジ、俺は勝利を取り戻したい。いつでもどこでもいい。復讐がやって来るぞ。アァ、このベルトをかけてもいい!」
▼辻「いいだろう。断る理由もねぇ。いつどこでやってもいいんだよな? オイ、とっておきの日にちがあるよな。受けて立ってやろうじゃねぇか」
▼コブ「(※日本語で)チョットマッテ! ニホンゴ、ワカリマセ〜ン! エイゴネ?」
▼辻「OK! エニタイム、エニウェア……」
▼コブ「(※辻が英語で喋り始めたのを遮り、英語に戻して)しっかり治すんだ。休んでな。それまではお前のBブロック優勝を祝ってやるよ。カンパイ(※と言って、缶ビールを辻の体にぶつけて乾杯して、立ち去る)」
▼辻「いいだろう。やってやるよ。いつやるんだ? 俺はいつでもいいぞ」