昨年、準優勝した辻陽太は3度目の出場で今年こそのG1初制覇を狙う。真夏の栄冠を手にした先に描いているのは「価値が暴落した」と考えるIWGP世界ヘビー級王座の「ベルト分解」によるIWGPヘビー級王座の復活。昨年のNEW JAPAN CUP優勝時に掲げた大目標を実現させるつもりでいる。『G1 CLIMAX 35』へ向けて辻に話を聞いた。
▼辻「僕、結構スロースターターなんですよね。自分的にも試合を重ねていく方が感覚的に好きなんですよ。単発でタイトルマッチをやるよりも、G1とかNEW JAPAN CUPみたいにシングルを重ねていって連戦が続く方が感覚がいいんですよね。大阪城とか東京ドームみたいな一発勝負ってあんまり好きじゃないんです。それを言い訳にしちゃいけないと思うんですけどね。あと今回のG1の難かなと思うところが、最初の北海道でSANADA、EVILが続くところですね。二夜連続でHOUSE OF TORTUREと戦う。これはなかなか気をつけて挑まなきゃいけないなと思います」
昨年、準優勝した辻陽太は3度目の出場で今年こそのG1初制覇を狙う。真夏の栄冠を手にした先に描いているのは「価値が暴落した」と考えるIWGP世界ヘビー級王座の「ベルト分解」によるIWGPヘビー級王座の復活。昨年のNEW JAPAN CUP優勝時に掲げた大目標を実現させるつもりでいる。『G1 CLIMAX 35』へ向けて辻に話を聞いた。
【辻陽太インタビュー】
――昨年、準優勝に終わっているだけに、今年にかける思いは強いですよね?
▼辻「そうですね。準優勝っていうのはみんな覚えてないんですよ。『去年優勝したの誰だっけ?』『ザックだよね』で終わるんで。『相手誰だっけ?』ってところまでいかないと思い出してもらえない。準優勝と優勝では雲泥の差ですからね。今年こそという思いでやっていきたいと思います」
――6・15大阪城大会でゲイブ・キッド選手に敗れてGLOBAL王座から陥落してしまいましたが、それも燃える要素になりそうですね?
▼辻「転んだらまた立ち上がって歩いていけばいいって僕は思うタイプなので。このまま落ちるんじゃなくて、しっかりとまた歩き始めて、新たな目標に向かって頑張ります」
――昨年のG1からこの1年間で進化していると思いますが、自分の中で特に手応え感じるのはどのあたりですか?
▼辻「手応えでいうと、結構削ってきたなと思う部分があって。やっぱり凱旋したての頃って、あれもやってみたい、これもやってみたいっていうのが結構あったんですけど、今は新日本プロレスの中で磨かれて必要な部分だけを残したというか。どんどん削っていったかなという感覚を持ってますね。技とかプロレスを通してもそうだし、リングの外でも自分でやらなきゃいけないことが見えてきたかなっていうのがありますね」
――Aブロックのメンバーを見渡すと上村優也選手には昨年、敗れていますので雪辱戦になります。やはり意識しますか?
▼辻「もちろん意識してる相手ですね。去年のG1で僕は彼を長期欠場に追い込んでしまったけれども、試合としては負けてると。でも前回のGLOBAL戦では勝ってるんでね。ただ、GLOBAL戦とG1の一戦はまた違ったものがあって。G1の借りはG1で返さないといけないんでね。ここはしっかり勝ちにいきたいと思います。メインですしね」
――勝敗はもちろん試合内容など、すべての面で比較されると思います。
▼辻「1試合1試合の評価とか感触とかあると思うんですけど、自分はやっぱり最終的な結果を大事にしていきたいなと思いますね。たとえ1試合コケたとしても、あとの8試合を頑張ればいい。そこに関してはこんなこと言ったらアントニオ猪木に反するかもしれないし、ファンは何だと言うかもしれないけど、やっぱりリーグ戦なんで、しっかりポイントポイントを押さえていきたいと思います。あくまでも目標は優勝ですから」
――同じAブロックでは棚橋弘至選手が最後のG1出場となります。もしかしたらこれが最後の対戦となるかもしれませんが…
▼辻「いや、そうはさせたくないですよ。そうさせるんだったら、この会社は終わりだと思いますよ。彼とはG1だけじゃなく、もう一回戦いたいと思ってるし、もちろん今回も勝ちにいきますけど、そこで戦ったうえで、もう一回どこかでファイナルロードとして辻vs棚橋というカードを組んでもらわないといけないと思ってます。棚橋さんに関してはラストG1だっていうのはわかるんですけど、いきなり本戦出場っておかしくないですか? 去年、予選敗退なのに」
――社長権限と言ってしまえば、それまでかもしれませんが、確かに一理ありますね。
▼辻「僕は出させてもらってる人間ですけど、そこの基準は明確にしないといけないと思いますね。どういう基準で予選リーグなのか、最初からエントリーされてるのか。去年は初の試みだったからいいとして、たとえば去年のG1の結果で、決勝トーナメントまでいってるから今年は本戦から、去年は下位3位だから予選トーナメントとか。そのあたりのファンのモヤモヤを解消することは必要なんじゃないかなと思いますけどね」
――ファイナルロードでの再戦も含めて棚橋選手と戦うテーマというと?
▼辻「テーマは恩返しだと思うんですよ。僕をこの世界に導いてくれて、育てててくれた人の一人であるんで。自分がここまでできるようになったというのを言葉なしにリングの上でプロレスで会話出来たらなと思います」
――勝って実力を見せつけて、棚橋選手に安心して引退してもらうと?
▼辻「そういうことですね」
――同じAブロックで他に気になる選手はいますか?
▼辻「あとはボルチン(・オレッグ)ですね。唯一のタイトルホルダーなんで、去年戦ったボルチンとは全然違うと思うんですよね。ボルチンが一番のヤマ場かなと踏んでますね」
――NEVER王者になってからのオレッグ選手はどのように映っていますか?
▼辻「正直あんまり時間が経ってないんで、NEVERを獲ってからシングルもしてないし、かかわってもいないんで、正直何が変わったっていうのは今はわからないですね。ただ、僕もそうだったように、ベルトを持つってことはチャンピオンとしての自覚が芽生えるんで、よりいっそう気持ち的に強くなってると思います」
――オレッグ選手とは7・27名古屋大会で当たりますが、そのヤマ場で勝利すればいい弾みになりそうですね?
▼辻「僕、結構スロースターターなんですよね。自分的にも試合を重ねていく方が感覚的に好きなんですよ。単発でタイトルマッチをやるよりも、G1とかNEW JAPAN CUPみたいにシングルを重ねていって連戦が続く方が感覚がいいんですよね。大阪城とか東京ドームみたいな一発勝負ってあんまり好きじゃないんです。それを言い訳にしちゃいけないと思うんですけどね。あと今回のG1の難かなと思うところが、最初の北海道でSANADA、EVILが続くところですね。二夜連続でHOUSE OF TORTUREと戦う。これはなかなか気をつけて挑まなきゃいけないなと思います」
――何をしてくるかわからない相手ですから、ケガを気を付けたいところですね?
▼辻「そうですね。ケガをしないっていうのは一つの才能であって実力だと思うんです。ケガをせずにこの過酷なG1を乗り切るっていうのは、その人の実力だと思うんです。そこは大事なところですね」
――Bブロックの選手とは決勝トーナメントになりますが、優勝戦で戦いたい相手はいますか?
▼辻「戦いたい相手で言うと、やっぱり鷹木(信悟)さんですね。こういう機会じゃないと戦えないと思うんで。あとはザック(・セイバーJr.)と(KONOSUKE)TAKESHITAが上がってくるかなと思ってるんですけどね」
――ザック選手と当たることがあれば、去年の決勝戦で敗れたリベンジする機会が訪れますね。
▼辻「そうですね。ザックは東京ドームのメインでも勝って、G1もIWGPも獲って今乗ってるんでね。そこをしっかり自分のモノにしていければと思いますね。でも、まずはAブロックを生き残ること。Bブロックのことは決勝トーナメントにいくことが決まってから考えようと思います」
――無所属として戦っている中で心境の変化はありますか?
▼辻「心境の変化は特に何もないですね。組んでる選手も変わらないですし、やることも変わらないんで。そもそもロス・インゴ(ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン)っていうのは独立した個人が集まったみたいなイメージだったので。それは今も変わらないですし。特にロス・インゴがなくなったからといって心境に変化が出たっていうのはないですね。ロス・インゴとしてどうしたいというのがあったわけじゃなく、僕はあくまでも辻陽太としてこういうものをみせたい、こういうふうにしていきたいとずっと思っていたので。それはどこのユニットにいても変わらないですね」
――辻選手にとって今年のG1におけるテーマはありますか?
▼辻「僕はその先にIWGPのベルト分解まで考えてあるんですよ。G1獲って、IWGP獲って、IWGPを分解するところまでが一つのセットだと思ってるんで。IWGPを取り戻すっていうところでしょうか。権威のなくなったIWGP世界をどうにか分解しなければいけないと思ってます」
――辻選手の中ではIWGPの価値が薄れていると感じているんですね?
▼辻「IWGP世界の価値って暴落してるじゃないですか。言い方は悪いですけど、STRONG女子にメインを明け渡すようなIWGPですよ。4月ぐらいからずっとセミファイナルでやってるじゃないですか。アメリカの影響もあると思うんですけどね。その程度にしか見られてないんですよ。新日本プロレスの大会なのにIWGPがメインじゃないですよ」
――そこは辻選手にとって譲れない価値観ということですね?
▼辻「譲れないし、譲っちゃいけないところですよね、会社として。この前の(6・29)名古屋だって棚橋社長のプロデュース興行っていうのはわかるんですけど、IWGPをメインにしないでどうするんだと思いますよ。IWGPって新日本プロレスの誰もが目指す場所なんですよ。誰もがそれを目指して入門して、つらい道場生活を乗り越えてデビューして、そこからもさらにつらい。っていうのを歩いてきた中で最終的にたどり着く場所なんですよね。そこをそんな軽々しく扱ってるこの団体、そしてそれを許してしまった今のIWGP世界ヘビーというのを変えないと、新日本プロレスは変わらないと思います。僕が凱旋した頃からベルトを分解するっていうのはずっと言ってるんですが、なかなか達成できてないんで、今年こそはってところですね」